三重県の昔話

民話の舞台を訪ねて 「峰弥九郎ものがたり」

PCのスクリーンセーバーに、今までに撮った写真のその月の物(今なら3月分)を使ってるんですが、
(Windows10にアップグレードする前は10年分くらいあったんですが、アップグレードした時に外付けのHDに移したから今は3年分)
そろそろこの花の咲くころだなぁ。とか
ここへ行ったのって今頃だったっけ。とか
そんなことを思うんですが、ちょっと待て、これって去年のか?それとも一昨年か?
そう、同じような構図の、同じような写真。
違う所で撮ってるはずなのに・・・
相変わらず、代わり映えのしない写真を撮ってます。
今月なんて、フォルダが4つもできてます・・・



さて、
民話を訪ねる企画、2回目は御浜町のお話。


熊野の山奥、坂本村に「峰弥九郎」という猟師がいた。
ある日、新宮へ用事があって出かけた弥九郎だったが、帰りが遅くなってしまった。

一升栗の峠を越えて引作まで来たところで、
「夜道に日暮れはないわい。ここらでひと休みしょうか」と、たばこを吸い始めた。
すると、暗闇の中何かがごそごそと動いている。
よく見ると、一頭の狼がいた。

「お前は狼やろ。そこで何をしやるんじゃ」
と言うと、狼は苦しそうに近づいてきた。
狼がだらんと開けている口の中をのぞきこむと、
「おお、おお、かわいそうに。大きな骨がささっとるぞ」
と、狼の口に手を入れて、さっと骨を抜いてやった。

弥九郎が帰ろうとすると、狼は後をついてくる。
「狼よ、もうこのあたりでええから、お前も帰って休め。そのかわりお前に子が生まれたら、一匹わしにくれよ」といって、狼を返してやった。


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それから半年ほどたって、狼のことなどすっかり忘れていたころ、
朝起きると、戸口の前で子犬が鳴いていた。
「さては、前に助けた狼がわしの言うことを守って、この子をくれたんか」
と弥九郎は、子犬に「マン」と名前を付けて大切に育てた。
大きくなると狩りにも連れていくようになった。
マンは、弥九郎も驚くほどすばらしい猟犬になって、あたりでもその名が知られるほどになった。


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そんなある日、新宮の殿様が「佐野のご猟場で巻狩りをするゆえ、猟師は集まるように」とお触れを出した。
弥九郎もマンを連れて巻狩りに参加して、そこで手柄を上げて褒美をもらった。

その後も、弥九郎はマンを連れて狩りをしていた。
ある日、近所に住んでいた叔母が訪ねてきて、
「弥九郎よ、お前がかわいがっとるマンは、狼の子じゃと世間では言うが、本当の話かのう」と聞いた。
弥九郎は、これまでのいきさつを話した。
「そやけど狼は人間にどれほどかわいがられても、生き物を千匹食うと、次は飼い主をおそう、そう昔から言われとるぞ。イナゴ一匹でも生き物のうちに入るとのことじゃから、もうそろそろ千匹になるんじゃないか。用心したほうがええぞ」と叔母は言う。


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外にいたマンは人間の言葉を理解したのか、三回遠吠えすると、山の方へと走り去って行った。
「マン、帰ってくれー!!」弥九郎は、裸足で家を飛び出しマンの後を追う。
マンは振り返り、一度弥九郎の方を見ると、悲しそうにまた山の方へ歩き出した。
それ以降、マンが弥九郎のもとに帰ることは二度となかった。
ただ、夜になると鷲ノ巣山の方から悲しそうな狼の遠ぼえが毎晩聞こえてきて、付近の人々は、
「あれはマンの鳴き声や」とうわさした。

優秀な猟犬として知られる紀州犬は、このお話の、弥九郎が育てたマンの血を引いていると言われている。


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峰弥九郎ものがたり(御浜町の民話) ← 詳しい内容(音声も聞けます)
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コメント

  • 大暗黒天.
  • URL

紀州犬にそんな逸話があったのですね。
ニホンオオカミと紀州犬って、違いが多いように思うんですけどねぇ。
子供の頃、近所に紀州犬飼ってる家があって、大きくはなかったけど怖かったなぁ・・・。

  • ほしみ
  • URL
大暗黒天. さん

紀州犬は、狼の血を引いてるってよく言いますよね。
よくよく考えると、違いは多いんだけど。

紀州犬って、やっぱり猟犬だから怖いですよね。

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